真夜中の訪問者

夜11時過ぎ


コンコン・・・。コンコン・・・。


『ん?何の音だ?』

この部屋にはチャイムがある。新聞の勧誘や、宅配業者は“ピンポン♪”を鳴らす。

まさかと思いドアまで行ってみる。


コンコン・・・。コンコン・・・。


覗き穴を覗くと、そこには50代後半の男性が立っている。

『ん?』

隣の住人だった。


数ヶ月前に引っ越してきたこの方は、引越し早々尋ねてきて、

「何とかしてください、暑くってどうしようも無いんです。」

いきなり何のことやら訳が分からなかったが、とりあえず部屋に来て欲しいとお願いされた。

促されるままに部屋に入ると、殺風景な部屋の中は灼熱の空間・・・。

西日が入る角部屋は、サウナ状態になっている。

話を聞くと、部屋についてるクーラーが使えないとの事。

どうやら壊れているようだ。

「管理会社に電話したらどうですか?」

管理会社が何処だか分からないとの答え。

入居を決めて、手続きした時の書類はどこですか?の問いにも、

「分からない・・・。」

よくよく話を聞くと、結婚している奥さんが手続きをして何も分からない・・・。

話が進まないので、そのおじさんの携帯を借り管理会社に電話した。


その男が立っている。


『こんな時間に何だろう?』


扉を開け、


俺 「どうかしましたか?」

男 「ちょっとお願いがありまして・・・」

俺 「?」

男 「1万円でいいんで、お金を貸してもらえませんか?」

俺 「・・・。」


耳を疑った。私はこの人の名前も知らないし、どんな人かも知らない。

相手も同じだろうに、夜11時にその事で見知らぬ隣の人を訪ねてくる事が信じられなかった。

またまた話を聞いてみると、奥さんがお金をくれないと言っている。

別居の為にココに引っ越してきたのかどうかは知らないが、丁重にお断りをした。

毎日開けっ放しにしていた窓は、翌日からしっかり鍵を掛けることとなった。






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